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日本の夜空に

人々の記憶に残る一瞬を灯す。

その一瞬に、人生を懸ける花火師

福島県川俣町 |菅野煙火店

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親方のこと

名前: 菅野俊宏

職人名: 花火職人

地域: 福島県川俣町

工房名: 菅野煙火店

町のお気に入りスポット:
川俣中央公園

正解なき探求の先に、観る人の心を動かす

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菅野煙火店が得意とするのは、一発一発に魂を込めて打ち上げる「大玉」

夏の夜空を彩る、壮大な光の芸術、花火。その一瞬の輝きに、私たちは心を奪われ、歓声を上げ、過ぎゆく季節を想う。多くの日本人にとって、花火は特別な思い出と共にあるだろう。

しかし、そのわずか数秒の感動が、どれほどの手間と時間、そして職人の知恵と覚悟によって生み出されているかを知る人は少ない。

「春から準備して人件費もかけて、それだけ労力をかけて一発で終わるんだから。おかしいよね。コストパフォーマンスは悪いよな」

そう言って笑うのは、福島県川俣町で代々花火づくりを営む「菅野煙火店」の親方、菅野さん。この仕事の厳しさを知り尽くした者だけが持つ、不思議な明るさが宿る。
菅野さんは、ただ綺麗なだけではない、人の記憶に深く刻まれる花火を目指している。

「もう一回この花火を見たいと思ってもらえるように。インパクトというか、頭で何年間も『あの球はいいな』って思ってもらえるような花火をみせたいね」

そう語る菅野さんだが、意外にも、最初からこの道に情熱を燃やしていたわけではなかったと話す。5人兄弟の長男として生まれ、家業を継ぐことを意識しながらも、その心には別の夢があったのだ。

研究者への夢と、長男としての宿命

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危険と隣合わせのなかで、感動を作る喜びがある。

「他に男の兄弟がいたらやらなかったかもなぁ」

5人兄弟の4番目、唯一の長男として生まれた。その宿命が、彼の進路を決定づける。

「進学校に通っていたから、周りはみんな大学に行くんですよ。だから自分も行きたかった。大学に行きたいって言ったときに、花火継ぐから行かせてくださいって親に言ったんです」

学問の道、特に応用化学への興味は尽きず、本当は大学に残り研究者になりたかった、という想いもあった 。だが、長男としての宿命と、自ら交わした約束。菅野さんは22歳で古里に戻り、花火職人としての人生を歩み始める 。その決断は、彼の人生の大きな転機となった。

「修業時代、一番大変だったのは、やっぱり終わりが見えないこと。これで良し、という正解がないからね」

それは、かつて夢見た研究者の世界にも通じる、終わりなき探求の日々だった。大学で培った化学の知識は、色の配合という「力の見せ所」で活かされることとなる 。

「爆発させるイメージじゃなく、光を出すという考え方。だから丸く開く。光を出すのと割る火薬は、べつものなんです」

花火づくりは、遊びごころも大切だと菅野さんは言う。

「『こう作ったら面白いんじゃないか』って、変わった花火を考えて、調合して。失敗すればドカンといくし、成功したらすごいものが生まれる」

危険と隣合わせの緊張感の中、かつて研究室で追い求めたかったであろう創造の喜びを、彼はこの工房で見出していったのだ。

矛盾を抱きしめる仕事

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色の変化を生み出す日本の花火特有の「変華星(へんかぶし)」といった美しい表現を追求

「頑固さと柔軟性。大胆さと繊細さ。相容れないようなものが、この仕事には必要になるんです」

菅野さんの哲学は、花火づくりの全工程に貫かれている。親方から受け継いだ製法を守り抜く「頑固さ」。音楽と花火を融合させる現代のプログラムに対応する「柔軟性」 。一瞬の気の緩みが大事故に繋がる火薬を扱う「繊細さ」 。そして、天候という不確定要素を乗り越え、最高のパフォーマンスに挑む「大胆さ」 。

その仕事は、想像を絶するほど緻密だ。作業場に入る前には必ず鉄の棒に触れ、体の静電気を逃がす 。様々な薬品を調合して作った色の源「星」を、一ヶ月かけて球状に育て、それをミリ単位の精度で玉皮に詰めていく 。わずかな偏りが、夜空に描く円の歪みとなる 。仕上げには、糊を塗ったクラフト紙を何層にも手で貼り重ね、乾燥させる作業を最低でも5日間繰り返す 。

「一個も機械的なものはないんですよ。1万発打ち上げるとしても、その一個一個にこれだけの時間がかかっているんです」

未来の職人に託す、安全とチームワークへの想い

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この技術と想いを次の世代へ託す覚悟を決めている

現在、工房を支えるのは、親方を含む60代のベテラン職人たち 。コロナ禍で若い職人が去らざるを得なかった厳しい時期を乗り越え、今、この技術と想いを次の世代へ託すという大きな課題に直面している 。

「正直、20年以上やってる俺でもわからないことばかり。だから焦る必要はない。まずは10年くらい続けてもらってそこから事業継承の話かな」

新しく迎える仲間には、まず打ち上げの現場や、比較的危険の少ない「玉込め」といった作業から始めてもらう 。何よりも大切にしてほしいのは、「独りよがりにならないこと」だと親方は力を込める 。

「火薬を扱う仕事だから、自分のミスが周りの人を危険に晒すことになる。自分もそうだけど、他人を危険にさらすからね」

安全は、個人の技術ではなく、チームワークによって守られる。その考えが、工房の絶対的なルールなのだ。
だからこそ求めるのは、ある程度の社会経験を積み、チームの一員として責任を共有できる人物。そして、色彩感覚といった芸術的なセンスと、火薬の調合などがあるため化学を楽しめる方 。それは、この危険で美しい仕事に向き合うための、最低限の「覚悟」の証でもある。

自然と共に生きる、川俣町での暮らし

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里山の魅力と、移住者も馴染みやすいハイカラな気質を持つ町

工房のある川俣町は、豊かな自然に抱かれている。

「里山から見る町内の長閑な風景はきれいだし、地元でとれた新鮮な野菜やお米、シャモなんかの食材も魅力だね」

夜になれば、空には「天然のプラネタリウム」が広がり、年中天体観測ができるほど星が美しい 。

休日は町で一番四季を感じられるという「中央公園」を散策したり、少し足を延して吾妻山や安達太良山での低山登山を楽しんだりもできる 。

電車が通っていないという不便さはあるものの、中心街にスーパーや銀行などがまとまっており、車があれば生活に不自由はない 。かつて絹織物で栄え、横浜との交易があった歴史からか、多文化を受け入れる「ハイカラな気質」が根付いており、移住者も馴染みやすいという 。

厳しい仕事の合間に、この土地の穏やかな自然が、職人たちの心を癒やしてくれるのだろう。

おまけの話

「花火を好きと仕事にするは別もんだからね。実際やるとしんどいわ」

取材中、菅野さんは何度もこの仕事の厳しさを率直に語ってくれた。それは、決して夢を打ち砕くためではない。むしろ、生半可な気持ちでこの世界に飛び込み、未来ある若者が傷つくことのないようにという、不器用ながらも誠実な愛情なのだと感じた。
「継ぐ」と決めたあの日の覚悟。その重みを知るからこそ、彼は未来の仲間に、真実だけを伝えようとしている。その真摯な姿勢こそ、人の心を動かす美しい花火を生み出す、本当の源泉なのかもしれない。

取材・文章/AIライター 写真/菅野煙火店 提供

求人情報

工房名:川俣町役場(受入工房:有限会社菅野煙火店)

働き方:
地域おこし協力隊

給与:
委託料の額は、月額266,000円
※試用期間はありません。

勤務地:
有限会社菅野煙火店(福島県伊達郡川俣町小神板倉内13)

勤務時間:
活動日数や活動時間は、受入先と協議し決定します。 ※閑散期、繁忙期で活動時間等が変動します。

仕事内容:
花火師としての知識・技術を習得し、伝統文化の振興および事業の継承・拡大を目的とし、有限会社菅野煙火店に弟子入りしていただきます。

花火師の仕事というと、「夏に花火を打ち上げる人」というイメージがあるかもしれません。
でも実は、一年を通してさまざまな作業を行っているんです。

たとえば、一つの花火をつくるのにかかる時間は、おおよそ2〜3ヶ月。
大きな花火になると、それ以上かかることもあります。
夏の本番に向けて、まずは火薬を調合し、思い描いた色や形になるよう、一つひとつ花火玉を手作業で仕上げていきます。
さらに、打ち上げの順番や構成を考えるのも大切な仕事。
大会のテーマや会場の雰囲気に合わせて、夜空をどう彩るかを設計していきます。

何千人もの人が夜空を見上げる、あの一瞬に向けて——。
花火師は、技と心を込めて、人の記憶に残る風景をつくる誇りある仕事です。

【入社後1年目に任せる仕事】
簡単な製造(玉込め)や、打ち上げの補助などをお任せします。
※玉込めとは:球体を半分にした玉皮(たまかわ)の内側に星を並べていく事

【3年後の協力隊任期終了後】
活動を通じて、花火師としての知識・技術について習得し、任期終了後は身に着けたスキルを活かして、花火師として活動をしていただきます。

福利厚生:
▼月給に加えて下記別途支給
住居費:月額上限42,000円
活動費:年額上限776,000円
※転居費用、生活備品、光熱水費は自己負担です。
※活動に使用する自動車及びパソコン等事務機器、携帯電話は、ご自身で用意いただきます。

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移住を伴う就職・転職者向けの各種サポート
こちらの求人は「川俣町・移住定住等支援事業」に参加し、移住者の就職を歓迎しています! 川俣町では、移住者向けに様々な補助制度があり、以下のような制度の活用が可能です。

【かわまた暮らし体験住宅】
暮らしを手軽に体験できる戸建ての宿泊施設があり、面接等でお越しの際もご利用が可能!(一泊2,350円)

【リノベーション済みの公営住宅】
移住者向けリノベーション済み公営住宅の4戸をご利用可能!2LDK(53.08㎡)(月額3万円)

【ふくしま12市町村移住支援交通費等補助金】
ふくしま12市町村への往復交通費を約半額補助!就職面談や現地での先輩移住者訪問、物件探しにご利用可能です。

【移住支援金】
全国からの移住者が対象!はじめてのふくしま12市町村移住なら最大200万円の支給制度があります。

【住宅取得支援奨励金】
県外から転入して1年以内に住宅(新築・中古住宅)を取得した方へ、取得費用の一部を支給(最大200万円)

【空き家改修等支援金】
空き家を購入して改修・片付けした移住者へ、その費用の一部を支給(最大250万)

【移住者の繋がりを作る交流イベント】
移住者向けの交流会・異業種交流会」など、多数の交流会を実施しております!
(※各制度には規程があるため活用の際には必ず行政等のご案内を参照するか、下記の川俣町移住・定住相談支援センターにお問い合わせください)

また、町内には様々なサークル活動、スポーツ活動等があり、里山暮らしを楽しんでいます! 卓球、スポーツ吹矢、グラウンドゴルフ、ボッチャ、ヨガ、ウォーキング、ランニング、ダンス、舞踊、芸能伝承・盆踊り、歴史、民謡、ギター、カラオケ、ケーナ、美術、書道、写真、将棋、蕎麦打ち、パン教室など多数。

詳細については、移住者支援情報はポータルサイト「かわまた暮らし」に集約していますので、あわせてご覧ください。
【川俣町移住・定住相談支援センター】
平日 8時30分~17時15分
電話でのご相談:050-3117-2275

休日休暇:
活動日数や活動時間は、受入先と協議し決定します。
※基本的に土日休み
※夏の繁忙期は、変則でのお休みとなります。

求める人物像:
■未経験大歓迎
■学歴不問
■人柄重視!周囲と協調しながら動ける方歓迎!
※花火づくりは、美しい演出の裏で「火薬」を取り扱う繊細な作業でもあります。火薬の配合や打ち上げ準備には、細やかな注意と慎重な姿勢が求められます。
特に、静電気や湿気などの環境の変化が作業に影響を与えることがあるため、安全を第一に、集中して取り組んでいただきます。

▼必須条件▼
・3大都市圏をはじめとする都市地域等に現に住所を有している方
・採用後、川俣町に住民登録をし生活の拠点を移すことができる方
・活動期間終了後も川俣町に定住する意欲のある方
・地方公務員法第16条に規定する欠格条項に該当しない方
・普通自動車運転免許(AT限定OK)

▼優遇条件・スキル▼
パソコンの一般的な操作スキル
※ExcelはオートSUM程度、Wordは文字入力ができればOK

▼ゆくゆく必要となる資格▼
・煙火消費保安手帳
・火薬類取扱保安責任者
・火薬類製造保安責任者

<こんな方、向いてます!>
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・ものづくりが好きな方
・花火や伝統に興味がある方
・新しいことを素直に学べる方
・安全や丁寧さを大事にできる方
・周囲の意見を取り入れつつ、思い切った行動ができる方

<こんな方、より活躍できます!>
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・化学が好きな方(火薬の調合などがあるため)
・色のバランスや組み合わせを考えるのが得意な方

※詳細は川俣町HP募集要項をご覧ください
https://www.town.kawamata.lg.jp/site/kurashi-tetsuzuki/enkaten2025.html

募集期間:
2025年7月16日 〜 2025年8月29日

採用人数:
1名

選考プロセス:
▼オンライン説明会(※1)
▼受入企業との事前面談(※2)
▼応募申込/随時(8/29締切、当日消印有効)
▼1次選考/書類(応募受付後、随時結果通知)
▼おためし地域おこし協力隊員体験活動(※3)
▼2次選考/面談
▼内定
▼入隊(11/1)
※1:ご希望の日時で調整
※2:町内や受入企業の担当者との顔合わせ等、応募前に活動環境の確認を必須としています。
※3:日数はオンラインでの個別説明時にご説明いたします。活動中、町から上限12,000円/活動日を支給

その他:

川俣町HP募集要項:https://www.town.kawamata.lg.jp/site/kurashi-tetsuzuki/enkaten2025.html