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唯一無二の音色を作り出し

多くの人の感動を生むために、

人・物・事に誠実に向き合う

富山県高岡市|シマタニ昇龍工房

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親方のこと

名前: 島谷好徳

職人名: 鍛金職人

地域: 富山県高岡市

工房名: シマタニ昇龍工房

町のお気に入りスポット:
高岡おとぎの森公園

江戸時代から受け継いだ技で、新たな価値を創造する

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国内だけではなく、海外からも注目される"おりん”

金属製のお椀状の形をした仏具、「おりん」。寺院で目にしたことがある方も多いのではないだろうか。
心を落ち着かせ、祈りに集中させる独特の音色は、寺院の仏具としてだけではなく、サウンドヒーリングとしての需要も高まっている。シマタニ昇龍工房は創業から116年、江戸時代から続く鍛金技法を受け継ぎ、「おりん」を作り続けている工房だ。

「真鍮を叩き、炎に当てる工程を繰り返して形をつくり、縁を金鎚で叩いて調音し、心地の良い“うねり”のある音を導き出します。海外からの注文も増えているのですが、僕が作ったおりんの音を聞いて、涙を流される外国人の方もいました。試行錯誤をしながら生み出したおりんの音色で人の心を動かせたときが、何よりも嬉しい瞬間です」

4代目の島谷好徳さんは優しい笑顔で話してくれた。

特別で、尊い家業の技術を後世に残していく覚悟

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工房にある道具や配置まで、先人の知恵が詰まっている

家業を継ぎ、伝統工芸士となった島谷さんだが、学生時代に工房を継ぐ気持ちは全くなかったと話す。

「小さい頃は僕の家以外でもおりんを作る工房が複数あったので、自分の家が特別だとも思っていなかったし、朝から晩まで金属を叩いている仕事を面白そうだとは思いませんでした。何かを作ること、作ったもので人に喜んでもらうことは好きだったので、大学を卒業したら料理人になろう、なんて考えていましたね」

転機が訪れたのは大学卒業後。東京で暮らしていた島谷さんが偶然話したご老人に言われた言葉だった。

「『仏様の道具を作る家に生まれるなんて、特別で、素晴らしいことですよ』と言っていただいたんです。モヤモヤしていた気持ちが晴れて、高岡に帰ろうと気持ちが固まりました。家業を継ぐことは生半可な覚悟では成し遂げられないのは分かっていて、中途半端な気持ちでは帰りたくなかった。代々受け継がれてきたかけがえのない歴史と技術を、自分が後世に残していくんだと、この言葉で覚悟が決まりました」

感動を生み出すモノづくりへの追求心

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経験と高い技術が必要な手打ち鍛造による調音

23歳で3代目である父親に未経験から弟子入りし、修業を積んできた島谷さん。父親と同じ土俵で仕事ができるようになりたいと、必死に背中を追っていた。

「祖父も父も『見て、覚えろ』のスタンスで、技術を盗んでは実践していく毎日。調音の作業も5年間はただ横で聞くだけで、それから少しずつ任せてもらえるようになったのですが、話にならないくらい下手くそでした(笑)。段々と手直しが減り、僕の理想のうねりの音が出せるようになるまでは12年かかりました。厳しい道のりでしたが、この道で生きていく覚悟を持ってスタートしたので、振り返れば辛かったというより楽しかったです」

縁の加工、底絞り、下仕事、焼きなまし、仕上げ、調音と、多くの工程と時間を経て出来上がるおりん。全工程を一人の職人だけではなく、複数の職人の手によって手掛けていく。

「調和がとれたうねりがある唯一無二の音を生み出すために、最後の工程の調音で納得がいく音が出せない場合、潰す判断をすることもあります。それまで手掛けてきた時間と職人の想いが積み上がっている分、その決断をするのは本当に辛いです。だからこそ、なぜ失敗したのかを洗いざらい考えて、原因をとことん追求します。修行時代の12年間、トライアンドエラーを繰り返して得てきた経験をフルに生かします」

使い手に感動を与える島谷さんのモノづくりに、妥協は存在しない。

育成に真摯に向き合い、若手職人を育て上げる

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工房にも多くの国内外のお客様が足を運ぶ

全国でおりんを作る工房は3軒のみ。生産が担保できている工房は少なく、シマタニ昇龍工房が全国の寺院からの注文の約8割を手掛けている。現在は70代、40代、20代が1名ずつ、先代と島谷さん合わせて5名の職人が制作にあたっている。

「鍛金の技術を生かした生活用品の自社ブランド『syouryu』を立ち上げ、ありがたいことにメディアにも多く取り上げていただきました。3年前からは家庭用の小さなおりんも制作し、国内のみならず海外からの注文も増加しています」

今回は需要増加に伴う増員としての採用だが、経験の有無は問わないという。

「働く職人全員に共通していることは、『目の前の人や仕事に対して、真面目に、誠実に向き合える』ということ。経験がなくても、それさえあれば一人前の鍛金職人になれます」

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県外から移住してきた職人も活躍している

若手職人が早期に成長するために、学びを最大化させるためにはどうしたらいいか。日々悩みながら若手の育成に向き合っていると話す。

「僕が育ってきた環境のように『見て、覚えろ』の育成方法はしていません。うまくいっていないときは、道具の持ち方や手の置き方など、できる限り細かく観察して、具体的なアドバイスをするようにしています。ただ、全てを教えてもらったことではなく、自分で気が付くことが後の財産になることを僕自身が実感しているので、そのあたりのバランスも考えながら育成しています。仕事がある程度まで任せられるようになったら、鍛金職人として自分の作品づくりにもチャレンジしてほしいと思っています。道具や材料は工房にあるものを使ってもいいので、自分の技術を生かした新しい商品を生み出していってほしいですね」

モノづくりの歴史と伝統が根付く、日本有数の町

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歴史の積み重ねを感じる落ち着きがある町並み

シマタニ昇龍工房は国指定史跡にも指定される高岡城跡を有する高岡市内にある。観光地として賑わうエリアとは異なり、人々の暮らしとモノづくりの仕事が息づく千石町の一角に立つ。

「工房は旧北陸街道沿いに立っていて、家の横幅が狭くて細長い昔ながらの家が多いです。金屋町のような整えられた景観、土蔵造りの町並みとは異なりますが、昔の生活を想起させる建物や風景がたくさんある地域です。また、高岡市はモノづくりの町ということもあり、高岡銅器、高岡漆器の職人や、それに関わる仕事をしている若手が集まって、イベントを企画したり活発に活動をしています。色んな作り手と接点が持てるのも、高岡での生活の魅力の一つですね」

島谷さん自身はオフの時間は料理をしたり、キャンプに行ったりすることが多いそう。

「何よりも、高岡は海のものも、山のものも本当に美味しい。空気も澄んでいて水も美味しいから肌もきれいになりますよ。車で1時間も走れば雄大な自然の中でキャンプもできます。都会では体感できないものがたくさんある高岡に、ぜひ、みなさんにも一度来ていただきたいです」

おまけの話

「いつかは継がないといけないとは分かっていましたが、中途半端な気持ちであるうちは進むべきではないと思っていました」
島谷さんが家業を継ぐ決心がつかなかった理由をそう話してくれた。
「金属をただ叩き続ける地味な仕事に思っていた」と言いつつも、これまで技術を受け継いできた職人に対して、誰よりも敬意があったからだと思う。
取材中も私との共通点を見つけて話しやすい雰囲気を作ってくれたり、質問に対しても取り繕うことなくまっすぐに答えてくれる島谷さんは、目の前の出来事や人に対して本当に真摯に向き合う方なのだと感じた。
最後に、「一緒に働くみんなに対して、感謝の気持ちをちゃんと言葉にすることを大事にしています」と話してくれた。一番大事なことを当たり前に大切にできる職人は、一緒に働く職人からもお客様からも、やっぱり愛されるのだと納得した。

取材・文章/藤本那奈子 写真提供/シマタニ昇龍工房

求人情報

工房名:シマタニ昇龍工房

働き方:
フルタイム(正社員)

給与:
月給200,000円
※試用期間あり(試用期間中:月給175,000 円)

勤務地:
富山県高岡市千石町4-2

勤務時間:
8:00〜17:30 ※昼休憩1時間、10時・15時に15分間の休憩あり

仕事内容:
主に金槌で真鍮板を叩く仕事です。
一日中、金槌でこつこつ叩きます。炎を使った焼き鈍しの作業もあります。
焼き鈍し作業では、真鍮を620℃に熱して柔らかくし、また叩いて成形していきます。

【入社後に任せる仕事】
シマタニ昇龍工房の自社ブランド「syouryu」が展開する“すずがみ”の制作からお任せします。
3つの模様のうち、1つの模様を先輩職人と同様のクオリティで叩けるようになることが目標です。

福利厚生:
交通費等支給
社会保険(健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険)

休日休暇:
1年変形労働時間制(年間休日105日)
祝日、GW、夏季休暇、年末年始休暇、慶弔休暇、有給休暇

求める人物像:
技術や経験はあればなお良いですが、無い方でも指導しますのでご安心ください。
重いものも持ちますので、力は必要になります。

職人には、不器用でも真面目に誠実な姿勢で取り組む気持ちを求めています。
ひたすらに、ひたむきに、「おりん」と向き合い作り上げていきます。
昨日より今日、成長を喜べる方を募集します。

募集期間:
2025/05/23 〜 2025/07/17

採用人数:
1名

選考プロセス:
書類選考→面接→内定

・取得した個人情報は、採用選考にのみ使用します。
・選考プロセスは変更になる可能性があります。
・不採用理由についての問い合わせにはお答えできませんのでご了承ください。

その他:

HP:https://syouryu.co.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/syouryu.official/
syouryu:http://syouryu.com/