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作り手の個性が活きる会津本郷焼

無限の組み合わせから

自分の方向性を問い続ける探究者

福島県会津美里町|陶雅陶楽

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親方のこと

名前: 佐藤大幹

職人名: 会津本郷焼職人

地域: 福島県会津美里町

工房名: 陶雅陶楽

町のお気に入りスポット:
窯がある白鳳山の展望台から眺める磐梯山、会津盆地

多様な作風を認めあい400年以上受け継がれてきた技

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どんな料理も映える色合いとモダンなデザインが、若い世代にも人気。

福島県会津地方の中央に位置する会津美里町。
ここに、東北最古の窯「会津本郷焼」の里がある。

日本各地に焼き物の産地はあるが、会津本郷焼は土のぬくもりを伝える陶器と、白く艶やかな磁器が同じ土地で作られる全国でも珍しい産地だ。会津本郷では良質な陶土と磁石が産出されるため、双方を同時に生産できる産地として成り立ったのだ。水路、土蔵や煉瓦の煙突が並ぶ街の風景には、人々が守り継いできた歴史の重みが感じられる。

会津本郷焼の始まりは、1593年に遡る。会津若松城主・蒲生氏郷が城の改修のため、播磨国(現・兵庫県)から瓦職人を招き、瓦を焼かせたことが起源とされる。以来四百年以上の時を経て、現在も12の窯が伝統を受け継いでいる。
「この作風でなければ本郷焼ではない」という決まりはなく、それぞれの作り手が持つ感性を活かして発展してきた。その懐の深さとしなやかさが大きな魅力である。

「陶雅陶楽」は、戊辰戦争(1869年)の後に開かれた窯だ。現在の当主・佐藤大幹さんは、その6代目にあたる。

「陶雅陶楽は、『形をきっちり作る・変形させない』を理念として、昔ながらのつくり方を守ってきました」と佐藤さんは静かに話す。

「会津本郷焼には様々な作風がありますが、私たちは昔からのオーソドックスな釉薬、飴釉・灰釉を使い続けています。昔からの技術を発展させて今風の色に寄せたり、原料を改良したりと研究を重ねています」

使い手の声を聞き、一緒に作り上げる面白さがある

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陶雅陶楽の店舗。和モダンな雰囲気の店内で、お客様との会話も楽しめる

佐藤さんが陶芸に触れたのは、子どもの頃。祖父にろくろを教えてもらったのが始まりだった。

「中学生の頃から、ろくろを習い、少しずつ仕事場の掃除や手伝いをしながら、職人さんたちの仕事を見て覚えていったんです」

20代の頃は作家活動に打ち込み、展示会で数々の賞を受賞した。しかし経験を重ねるうちに、次第に日常で使ってもらえる器の魅力に惹かれていったという。

「やっぱり、お客さんが使ってくださって、『使いやすいから、同じものをもう一度買いたい』って言ってもらえると嬉しいです。対面で話す中で、品物の弱点や改良点も見えてくる。お客さんの声は次の制作意欲にもつながります」

伝統を守りつつ、可能な範囲で軽量化したり、現代の使い方に合わせて高台を入れないなど時代に応じた工夫も行っている。

「陶器は、表面に細かいヒビが入っているんです。使っていくうちにそこから染み込んで、模様のように変化していく。使えば使うほど味が出て、唯一無二の表情になるんですよ。複数枚買ってくださった方が『一つひとつ違って楽しい』と言ってくれると、一緒に作品を育てている楽しさがあります」

繰り返し作ることが、技術を究める道

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より多くの人に会津本郷焼の魅力を伝えるため「ろくろ体験」や「出張陶芸教室」にも力を入れている。

粘土を機械で整えることから制作は始まる。ろくろや石膏型で成形し、口や高台を丁寧に仕上げる。三日から一週間ほど乾かして土を強くした後、素焼きを経て釉薬をかけ、本焼きで完成する。全工程はおよそ二週間。一人の職人が最初から最後まで手をかける。

「専門学校で学んだ人や電動ろくろを使った陶芸教室で学んだ人で、自分が思った通りのものをつくれる、芯出しができる人がいいですね」

最初は、佐藤さんのサポートから。粘土を練るなどの工程は必要最小限にとどめ、縁を撫でることからスタートし、技術の基本を学んでいく。

「一緒に作業しながら手や指の使い方など、マンツーマンで教えますので、素直に受け入れてくれる人がいいですね。それと根気強く諦めない人。最初はうまくいかないことも多いですが、やればやるほど上達しますので」

作る練習を繰り返し、仕上げや形の捉え方を学ぶことが中心。 釉薬掛けも1年目から教えていく。

「例えばご飯茶碗でもコップでも、いろんな形があります。細すぎても洗いづらいし、大きすぎても使いにくい。使う人の立場に立って、日常でストレスなく使える形を考え、日々作りながら形の捉え方などを学んでください」

数をこなしながら1年後には体験教室で、ろくろを教えられるレベルを目指す。

無限の組み合わせから、自分の方向性を見い出す

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土の温かみがありながら、光の反射で淡い虹色が浮かぶ繊細な技

土を練り、形をつくり、釉薬をかけ焼く。同じ工程の繰り返しだが、実際は温度、湿度、土の配合、釉薬の配合・濃度、温度、焼き方など、そのほんのわずかな違いで、作品の表情はまるで別のものになる。

「自分がどんな土で、どんな釉薬で作りたいか。焼き方や粘土の配合次第で色も表情も変わるので、パターンは無限なんです。そのなかでやり続けることで、自分の作風も方向性も見えてくると思います。その過程はしっかりサポートします」

佐藤さんは三十年にわたり日々、探究を続けている。

「私も未だに、釉薬の配合やかけるタイミングなど微妙に変えています。予想通りの色になるか、ならないか、窯を開ける瞬間がいちばん楽しい。イメージ通りの時もありますし、最後の温度をあと5度上げれば良かったという場合もありますし、ずっとその繰り返しですね」

日々の試行錯誤の中にこそ、新しい発見と自分だけの答えがある。

今回は地域おこし協力隊として採用され、任期は3年。佐藤さんは縁あって会津本郷焼を学ぶ人にできる限りのサポートをしたいと考えている。

「全行程を覚えるのには5~6年程度かかりますが、できるだけ早く習得できるように教えていきたいと思っています。独立を目指すなら、3年目くらいから一緒に方向性を考えていければいいですね。任期が終わった後にも希望があればうちに残って経験を積むこともできますし、独立も応援します」

美しい里で、暮らし、成長していく。

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宮川千本桜。厳しい冬を越すと、春には宮川河川敷公園に植えられた桜が一斉に咲き誇る。

会津の四季は格別で、会津盆地と磐梯山は春の桜、新緑、紅葉、雪景色と季節ごとに異なる表情を見せる。食も豊かで、特に秋には身不知柿やブドウなどの味覚を楽しめる。

そんな自然に囲まれた会津美里町は三町村の合併で形成され、エリアごとに個性がある。本郷エリアはモノづくりの里、高田エリアでは神社や寺など歴史・文化に触れ、新鶴エリアはワインや生食用ブドウの産地で、自然の恵みを身近に感じられる。

またスーパーやコンビニ、商店街があり、直売所では新鮮な地元産品が手に入るなど、生活がしやすい環境。総合病院や大型商業施設がある会津若松市へも車で約20分とアクセス良好だ。

移住者の受け入れ実績も豊富で、住まい探しは移住コーディネーターがサポート。
家賃相場は一人暮らし約4万円、家賃補助は月最大4万5千円、敷金・礼金には9万円の補助があり、新しい挑戦を町ぐるみで応援する環境が整っている。

会津の風土のなかで学ぶ時間は、未来の自分を形づくる力になっていくだろう。

おまけの話

佐藤さんに趣味を尋ねると「趣味は仕事ですね。趣味は、陶芸みたいな(笑)。釉薬の配合のパーセントが夢に出るくらいなんで。しいて言うと野球観戦くらいですかね」と答える。仕事一筋ながら、ユーモアも忘れない。自身が厳しい修業時代を経験しているため、優しく丁寧に教えていきたいという。
窯のある白鳳山では、時折、仕事場にニホンカモシカが姿を見せることもある。
「冬は寒さが厳しいので、負けないような人がいいですね。雪かきも仕事の一部ですから」
会津は自然が厳しいからこそ、人々が支え合ってきた地域。佐藤さんをはじめ取材に同席された町役場の方々の温かい人柄が伝わってくるインタビューだった。

取材・文章/兼松真理 写真/会津本郷焼事業協同組合・会津美里町 提供

求人情報

工房名:陶雅陶楽

働き方:
地域おこし協力隊

給与:
月給180,000円
※試用期間なし

勤務地:
陶雅陶楽(福島県会津美里町字瀬戸町甲3180)

勤務時間:
8:30〜17:15(休憩1時間)

仕事内容:
会津美里町の伝統的産業「会津本郷焼」の後継者として、技術の習得・PR等を行うとともに、伝統的産業を活用した地域づくり、地域貢献に取り組んでいただきます。

福利厚生:
社会保険
有給休暇及び特別休暇
家賃補助(上限月額45,000円)
引越補助(引越しに係る運送費等について上限100,000円)
※同居家族がいる場合、150,000円を上限に補助
敷金礼金補助(上限90,000円)
自己研鑽費補助(上限年間100,000円)
起業助成(起業に要する費用について、上限 1,500,000円)
※協力隊3年目、任期終了1年目に起業する場合
その他:活動に支障がない範囲で、個人事業の運営、副業なども可能。

休日休暇:
週休3日制(土日とそのほか1日)
休暇日:会津本郷焼事業協同組合及び会津美里町と協議の上、決定します。

求める人物像:
年齢制限はありません。
陶芸の経験が必須となります。(経験年数は問いません)

また、地域との交流や地域イベントへの参加など地域活動への参加もあるため、
明るく前向きであり、何事にも全力で取り組み、協調性と主体性がある人が望ましいです。

募集期間:
2025年10月29日 〜 2025年12月24日

採用人数:
1名予定

選考プロセス:
書類選考
面接
内定

・取得した個人情報は、採用選考にのみ使用します。
・選考プロセスは変更になる可能性があります。
・不採用理由についての問い合わせにはお答えできませんのでご了承ください。

その他:

陶雅陶楽公式HP:https://touga-touraku.com/