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一流の技術と仕事への誇りを持ち

仙台箪笥の繊細で豪華な飾り金具を

自由自在に生み出す現代の名工

宮城県仙台市|八重樫仙台タンス金具工房

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親方のこと

名前: 八重樫 榮吉

職人名: 仙台箪笥金具職人

地域: 宮城県仙台市

工房名: 八重樫仙台タンス金具工房

町のお気に入りスポット:
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90代の職人が作り続ける仙台箪笥の飾り金具

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仙台箪笥の豪奢な金具が伊達の文化を体現する

宮城県仙台市は、戦国時代の仙台藩主、伊達政宗による豪華絢爛な「伊達の文化」が築かれた土地だ。仙台箪笥は、武士が刀や裃(かみしも)などを収納する「武士型箪笥」。鏡面仕上げの美しい漆塗りと豪奢な飾り金具が特徴で、国の伝統的工芸品にも指定されている。

仙台箪笥は海外での人気も高く、明治から大正時代には盛んに輸出されていた。現在でも海外で展示会を行うと、多くのお客さんが詰めかけるという。

「八重樫仙台タンス金具工房」は、90代の八重樫榮吉さんが、職人として守り続ける仙台箪笥の金具工房。鉄や銅などの板に、たがね(鏨)という彫刻刀のような道具で模様を刻み、打ち出し(裏から叩く作業)で厚みを加える。八重樫さんが作る唐獅子や龍などの動植物は、色彩を持たないにもかかわらず、今にも動き出しそうなほど躍動的だ。

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生き生きとした八重樫さんの龍

打ち出しの後は、鉄板の不要な部分をたがねと金槌で切りとり、ヤスリをかけて滑らかに仕上げる。最後に漆を塗って焼き付け、飾り金具の完成だ。

「漆で鏡面に仕上げる仙台箪笥は、どんなに小さな傷でも目立ってしまいます。金具が箪笥の表面を傷つけないよう、裏側もまっすぐ平らに整えます」

そのこだわりに、仙台箪笥の文化を担う職人としての責任感が垣間見えた。

父に才能を見出され、金具職人の道へ

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平面の鉄板を丁寧に打ち出し、作品に厚みと躍動感を刻む

祖父、父、17歳年上の兄と続く金具職人の家に生まれた八重樫さん。父方の叔父もほとんどが金具職人だ。しかし、八重樫さんはすぐには家業を継がず、住み込みで料理の仕事に就いたという。運命を変えたのは、3日間の休みに帰省した際、父にかけられた言葉だった。

「『おまえは手先が器用だし、子どもの頃は工房に忍び込んで遊んでいた。どうだ、金具職人をやらないか』と、毎日言われ続けまして。そこで料理の仕事を辞め、兄に弟子入りして金具の道へ進みました」

そして、八重樫さんは父が見込んだとおりの才能を発揮する。

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静かなたたずまいから素晴らしい作品が生まれる

「現在の天皇陛下が皇太子だった頃には、仙台のホテルで飾り金具の説明をしました。天皇家に納める仙台箪笥の金具制作に携わったことは、私にとって大きな誇りです」
そう語る八重樫さんは2015年、厚生労働省が傑出した技術者を表彰する「現代の名工」にも選出された。

金具職人としての歴史は、工業化が進んだ時期と重なる。機械で作られた金具が出回るなか、八重樫さんは飾り金具の精密さや、仕上げの丁寧さにとても気を遣ってきた。仙台箪笥が現代まで続いてきた背景には、自らの手で「豪華絢爛な伊達の文化」を貫く、金具職人の凛とした心意気があるのだろう。

「私はこの仕事が好きなんです。つい夢中になって、寝るのを忘れて作り続けることもしょっちゅう。それが良かったんだと思います」と、名工は柔らかい口調で語る。

金具の出来はたがねの出来で決まる

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八重樫さんが制作した数々のたがね。すべて先端の形が異なる

仙台箪笥の飾り金具はデザインが非常に細かく、線の太さや曲線のカーブ、模様の形状なども多岐にわたる。金具作りは、絵柄や模様に応じた何種類ものたがねを作るところから始まる。たがねは、先端をさまざまな形に成形した棒状の鋼だ。たがねの先端を板に押し当て、端を金槌で叩いて少しずつ少しずつ模様を刻む。

八重樫さんは、これまで2,000個以上の鋼を焼き、たがねを作ってきた。

「飾り金具は、たがねが良ければ作品も良くなります。逆にたがねが悪ければ、どんなに頑張っても良いものにはなりません」

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八重樫さん愛用の金槌。使い込むに連れて柄の部分がすり減っていくという

たがねと同様に、金槌も重要な道具だ。

「金槌にはいろいろな種類があり、用途に応じて性能が異なります。たとえば打ち出しに使う金槌なら、鉄板に傷をつけずに叩けなくてはなりません」と語る八重樫さん。金槌も自分で作ったり、市販の金槌に手を加えたりしているという。

「たがねや金具作りに適した金槌は市販されていないので、自分で作るしかありません。使う道具を間違えると、そのまま失敗につながりますから」

受け継ぐのは名工の技術と金具作りの楽しさ

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装飾が美しい仙台箪笥の引手

金具作りの修行は、箪笥の引手や蝶番(ちょうつがい)といったパーツ作りから始まる。手のひらに乗る小さな引手だが、鉄の棒を自在に曲げられるまでには時間がかかる。台座の制作も含めると、3年は必要とのことだ。

「金具作りの工程をすべて習得するには、5年ほどかかるでしょうか。でも、ずっと辛い修行というわけではないので、安心してください。大変なのはたがねを自由自在に作れるようになるまでで、そこを乗り越えれば本当に楽しいですよ。思いどおりの道具ができれば、思いどおりの作品を生み出せますから」

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八重樫さんの大作、孔雀と牡丹の衝立。今にも孔雀が羽を広げそうだ

仙台箪笥の製造工程は、木材を箪笥に加工する「指物」、漆を塗る「漆塗り」、そして「金具」の分業制だ。しかし現在、金具を専門とする職人は八重樫さんしかいない。その技術の承継は、仙台箪笥の文化を守ることにつながる。

八重樫さんは、金具作りの担い手となる方に「この仕事を好きになってほしい」と望んでいる。

「唐獅子でも金魚でも、お地蔵さんでも、お客さんがほしいと思っている飾り金具をそのまま作れれば一人前です。そして一人前になったときには、この仕事が大好きになっているはず。そうなれば毎日が楽しくて、長く続けられますよ」

住環境を選べる杜の都仙台

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「仙台箪笥協同組合」の事務所があるユノメ家具の外観

「杜の都」の別名を持つ宮城県仙台市は、東北地方最大の都市だ。夏は仙台七夕まつりの笹飾りや吹き流し、冬はSENDAI光のページェントのイルミネーションが街を彩る。冷やし中華発祥の地と言われ、牛タンや笹かまぼこ、ずんだ餅など食文化も豊か。

仙台市の中心部は買い物客でにぎわう大都市だが、少し足を伸ばせば緑豊かな地域が広がる。たとえば、車で30分ほどの秋保(あきう)地区は温泉と景観が人気のエリアだ。都市と自然のバランスが良い仙台は、住環境を選べるのも魅力の1つ。

今回は地域おこし協力隊としての採用となるため、仙台箪笥協同組合が移住後の活動と生活をサポートする。運転免許を持っている方なら、車を貸し出す予定とのことだ。採用後は仙台箪笥協同組合がスケジュールを作成し、効率的に研修を進める。宮城県内にいる伝統工芸の職人との交流や、さまざまな研修の機会も設けるという。

また、地域おこし協力隊の任期中は金具にとどまらず、指物や漆塗りの実体験も行うそうだ。各工程の職人とつながりを築きながら仙台箪笥を総合的に学べるのは、職人として大きな成長につながる貴重な経験となるだろう。

おまけの話

インタビューの際、超一流の職人を前にして緊張する私に、八重樫さんはとても穏やかな口調で思いを語ってくださった。愛犬のパグの人懐っこい様子からは、大切にされていることが伝わってくる。

八重樫さんの飾り金具に描かれる、唐獅子や龍などの躍動感は、優れた職人だからこそ生み出せるものだ。決して機械では代替できない。作品を拝見して「生きてる!」と子どものように驚く私に向けた、温かい笑顔が印象に残っている。

技術の高さと同時に、優しいお人柄も垣間見える取材となった。

取材・文章・撮影/さわきゆり

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求人情報

工房名:八重樫仙台タンス金具工房

働き方:
地域おこし協力隊

給与:
月給266,666円
※試用期間なし

勤務地:
八重樫仙台タンス金具工房(宮城県仙台市若林区下飯田字屋敷北164)

勤務時間:
9:00~18:00

仕事内容:
・仙台市内での伝統的工芸品の製造技術・技法の継承、販売、イベント参加
・仙台市外でのプロモーション活動、需要開拓事業
・観光地域づくり及び情報発信に係る活動
・その他、地域活性化、交流人口拡大に資するために必要な活動、
 仙台箪笥や地域の魅力を発信する活動

「金具の修行だけではなく、指物や漆塗も経験しながら、仙台箪笥を総合的に学んでいきます。新しい感性を活かして、SNSへの発信や観光イベントでも活躍していただけたら嬉しいです」(仙台箪笥協同組合 岡田専務理事)

福利厚生:
交通費等支給
社会保険(健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険)

休日休暇:
年間休日107日
有給休暇

求める人物像:
・三大都市圏をはじめ仙台市以外の都市地域に住民票を有し、仙台市内へ移住ができる方
・仙台箪笥に関心を持ち、技術継承に熱意がある方
・素直に学び、職人としてのスキルを高める姿勢を持つ方
・技術習得と販路拡大に貢献できる方
・SNS等を活用し、情報発信ができる方、ワード・エクセル等の
 基礎的なパソコン操作ができる方

募集期間:
2025年8月25日 〜 2025年9月14日

採用人数:
1名予定

選考プロセス:
▼宮城県「伝統工芸品産業新たな担い手確保支援事業」インターンシップへの応募
※「応募する」ボタンを押すと、インターンシップ参加申込フォームに遷移します
▼書類選考・オンライングループ面談の実施
▼インターンシップ(10/9(木)-11(土))へのご参加
内定

・取得した個人情報は、採用選考にのみ使用します。
・選考プロセスは変更になる可能性があります。
・不採用理由についての問い合わせにはお答えできませんのでご了承ください。

その他:

仙台箪笥協同組合公式HP

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