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工房スタッフを仲間と考え

自主性を尊重して人材を育成し

伝統の再構築に挑む大島紬職人

鹿児島県龍郷町|夢おりの郷

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親方のこと

名前: 南 晋吾

職人名: 大島紬職人

地域: 鹿児島県龍郷町

工房名: 夢おりの郷

町のお気に入りスポット:
土盛海岸

職人仕事だけでなく接客も行う工房へ

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夢おりの郷では室内でも体験ができる

株式会社夢おりの郷代表の南晋吾さんは、着物業界で新たなチャレンジを続けている。その挑戦の一つが工房での着付け体験や染め・織り体験の拡大だ。

「夢おりの郷の特徴は、染め・織りなどの体験ができることです。父の代から体験をスタートしましたが、工房見学に比べるとそれほど体験者数は多くありませんでした。着物業界は右肩下がりの状況です。だからこそ、大島紬の製造以外で売上を作らないといけないと思いました」と南さんは語る。

体験数を増やすために、Webサイトの活用やフリーペーパーへの掲載を進めた。2008年まで年間売上のうち1割だったが、現在は4割を占めるまで伸びたという。また2008年までは体験者の数は年間約1200人に留まっていた。しかし、2024年には約5,000人まで増加したという。

「奄美大島は雨が降った場合に観光できない場所が多く、その中で室内で体験できる場所のニーズがあったのだと思います」

一番人気は、トートバックやTシャツを泥染め・藍染めする体験だ。体験では、職人が一人ひとりに対して接客を行う。

「今回は製造と体験の対応をする染め職人を募集します。コミュニケーションを取るのが苦ではない方が向いているのではないでしょうか」と南さんは言う。

伝統を再構築し、右肩下がりの業界に活路を開く

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泥染めで色素を定着させる

南さんは着物業界の山積みとなった課題を解決するために、本場奄美大島紬協同組合の青年部会のメンバーと一緒に「本場奄美大島紬NEXTプロジェクト」という任意団体を立ち上げて活動している。

「今までの大島紬の常識にとらわれず、いい意味でその伝統をぶっ壊して再構築したいと考えています。大島紬はマルキの数が多いほど柄が細かく、価値が高いとされています。マルキとは、大島紬の柄を織りあげるときに使う絣糸(かすりいと)の本数のことです。柄の細かさにこだわると、結局デザインの素晴らしさが反映されにくいのです。デザイナーのお力をお借りしながら、デザインを模索しました」

プロジェクトから、今までの伝統からは想像できないイチゴ柄や金箔を使った大島紬が生み出された。またコンサルタントの協力を仰ぎ、販売方法を試行錯誤したところ、SNS発信が必要との結論に至った。織元自らがInstagramやFacebookで発信した結果、投稿を見たユーザーが大島紬を購入した。

「自分の作りたいものを織って販売することは、今の流通システムでは少し難しい部分があると感じています。自分が作りたい紬を織り、その着物をお客様に自分で届けられるようなシステムが呉服業界全体で構築できれば、職人のやりがいにもつながるのではないでしょうか」

待遇を改善し、働きやすい環境へ変える

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南さん憩いの土盛海岸

南さんが代表になってから、少しずつ待遇を改善し続けているという。

「父の元で働いていたときに、待遇はよくなっていきましたが、一企業としては福利厚生が足りていないと感じていました。僕が代表になってから、職場環境の改善に着手しはじめます。まず週休1日制を、週休2日制に変更しました。自分の身体を大切にでき、家族との時間を取れるようになりました」と南さんは語る。

2024年2月に、工房の近くにマンションを建てた。現在満室だが、空きが出たら他のスタッフにも貸し出せる。

「奄美大島に単身者向けの住まいが少なく、住居確保のハードルが高いと感じています。後継者を残していくためにも、ストレスなく働ける生活環境を整える必要があると感じていました」

夢おりの郷は、空港と奄美大島の中心地である龍郷町の真ん中にある。車で20分程度で大きなディスカウントショップやスーパーがあるため、生活には困らないという。

南さんは「龍郷町の人口は約6,000人、50年前からほぼ変わっていません。住みやすさから、移住してくる方も多いですね。観光地のようにゴミゴミしていないし、生活に困るほどの田舎でもなく、過ごしやすい場所です」とにこやかに話す。

自主性を重んじながら、チームで若手を育成する

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若手スタッフも指導を受けながら製作する

夢おりの郷では、人材育成時にできる限り本人の自主性を尊重している。

「以前はスタッフに対して、必要以上に頑張って教えてしまっていました。しかし自分が身につけたいと思わなければ、上から押し付けられてもなかなか覚えられません。なるべく本人の意向にあった仕事ができるように調整しています」と述べる。

自主性を重んじるようになったのは、南さんが職人として作る楽しさを改めて実感したからだという。

「言われたものを作るよりは、『今度こう変えたらどうなるだろう』と考えながら作るのが楽しいと職人である私自身も感じています。そのため自分でデザインしたものを織っているような、作家のような職人さんを育成したいですね。私自身、自分の作りたいものを織り、自ら販売することは当工房ならではの喜びだと感じています」

一人ひとり向き不向きに合わせて指導をするため、育成カリキュラムは用意していない。指導係は決めても、周りでフォローするシステムを作っている。

「例えば、2年目のスタッフのほうが最初につまづくところを覚えています。教える側も、技術を伝えることによってステップアップできるでしょう」と南さんは述べる。

職人に売れる喜びを還元する

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スタッフ一丸となって製造する

南さんは月に1~2回ほど、全国で行われている展示会で大島紬を販売している。展示会で大島紬が売れたときは、工房のスタッフに報告しているという。

「自分が織った帯や着物を購入してもらえることは、職人さんにとって嬉しいものです。職人さんにも私のように売れる喜びを体感してほしいので、工房のグループLINEで売れたことを報告して、喜びを分かち合っています。チーム一丸となって大島紬を織りあげ、工房全体で喜びを共有していきたいですね」と南さんは語る。

南さんは「この職人の織った大島紬が欲しい」という希望が出るようにしたいと思い、証紙に顔写真や名前を入れるようにしている。

「世間でいうところの推し活のように、この職人さんが作ったものに価値を感じ、購入したいという要望が出るようにしたいですね。私自身はもう1歩後ろに下がって、職人さんがメジャーになれるように尽力していきます」

実際に、工房のとある職人が下絵をかいた大島紬を欲しいというお客様からのリクエストがあり、織っている最中だという。

おまけの話

南さんが職人さんにスポットライトを与えたいのは、活躍の場を増やしていきたいだけでもないという。

南さんは「職人さんの後姿を見て、若い人々の憧れと思ってもらえるようにしたいですね。その連鎖ができれば職人が増えていき、後継者不足の解消につながるでしょう」と話していた。

職人が輝く世界を見つけられたら、若手も後を追うに違いない。職人が活躍するためにも自主性を重んじ、制作したいものを作れる環境は貴重ではないだろうか。

「僕がいなくても、のびのびと作れるようにしてほしい」という南さんの発言から、職人の自由を重んじていることが理解できる。

取材・文章/土岐さくら 写真提供/株式会社夢おりの郷

求人情報

工房名:株式会社夢おりの郷

働き方:
フルタイム(正社員)
フルタイム(パート・アルバイト)
シフト(週1〜2日)
シフト(週3〜4日)

給与:
正社員:日給9,000円~
パート・アルバイト/時給1,100円~
※試用期間3ヶ月あり(試用期間中の給与・待遇に変動はありません)

勤務地:
鹿児島県大島郡龍郷町大勝3213-1

勤務時間:
9:00〜17:00 ※休憩1時間(昼45分・夕方15分)

仕事内容:
染職人として、泥染め、藍染、化学染料染めなどの染色、染め体験の応対、他糸繰りや糊付け等大島紬製造に関わる仕事全般をお任せします。

【入社1年目にお任せする仕事】
・染め体験の接客
・泥染Tシャツ等販売商品の制作
・綛糸の染色、糊付、糸繰等
・藍液管理、テーチ木の染料炊き

福利厚生:
交通費支給
社会保険(健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険)
住宅手当
扶養手当
退職共済

休日休暇:
原則週休2日制
年末年始休暇
盆休暇(旧暦)
有給休暇

求める人物像:
40歳未満の方 ※長期キャリア形成を目的とするため
モノづくりや接客が苦手ではない方

募集期間:
2025/05/23 〜 2025/07/17

採用人数:
1名予定

選考プロセス:
書類選考→面接→内定

・取得した個人情報は、採用選考にのみ使用します。
・選考プロセスは変更になる可能性があります。
・不採用理由についての問い合わせにはお答えできませんのでご了承ください。

その他:

HP:https://www.yumeorinosato.com/
Instagram:https://www.instagram.com/yumeorinosato//