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【若手職人の、いまの話。】

産地で私が見つけた、生きる道

熊本・日奈久竹細工を次世代へ

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熊本県八代市にある日奈久温泉は、開湯600年を誇る県下最古の名湯。江戸時代には細川家の藩営温泉に指定されるなど、由緒ある温泉場として栄えてきた。この日奈久温泉で、土産物として湯治客に長い間親しまれ続けてきたのが、日奈久竹細工だ。

大正時代には、温泉街に10軒もの竹細工店が並んだ。しかし現在は桑原竹細工店のみ。最後の職人桑原哲次郎さんが、竹細工の技術を繋ぎ続けている。

2022年ニッポン手仕事図鑑後継者育成インターンシップを契機に、日奈久への移住を決めた清水 優衣さん。東京でグラフィックデザインを学んでいた彼女が、職人の道を選んだ理由とは?自分らしさを大切に、伝統を受け継ぐ若き職人の想いを聞く—――。

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「伝統工芸に関心を持ったのは、叔母がきっかけです。叔母の家には、各地のお土産品や人形が並んでいました。沢山のこけしが子ども心にちょっと怖かったのを覚えていますね」

そう語るのは、桑原竹細工店に弟子入りして3年目の清水 優衣さん。幼い頃から日本文化やものづくりに関心を抱き、グラフィックデザインを専攻していた学生時代は、多色摺りの江戸時代の木版画錦絵に魅せられた。

「和モダンが好きだったんです。錦絵の色合いは、インスピレーションや感性を育ててくれる。美術館に鑑賞に行ったり、錦絵を取り入れたデザインを研究していました」

就職活動を迎えて、広告業界でデザイナーを目指した清水さん。しかし思うように行かない日々のなかで、ふと職人として生きることに関心が向く。

「和菓子やバウムクーヘン職人の求人を見かけて、職人として生きていく道もあるんだと気づいたんですよね。生き方のひとつとして、気分転換みたいな気持ちで、ニッポン手仕事図鑑の後継者育成インターンシップに参加しました」

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数ある産地があるなかで、清水さんが選んだのは、熊本・日奈久竹細工 桑原竹細工店。地元から切り出した竹を熟練の技で加工した籠や箸、郷土人形「おきんじょ人形」を作り続けている。

「和の手仕事が好きだったので、竹籠もよく購入していました。なので、竹細工に挑戦してみたいなと思って、応募をしたんです」

一泊二日のインターンシップは、ものづくりのワークショップに近い場で職人に教わりながら和気あいあいと竹細工を作る時間だった。「まるで林間学校みたいでした」と清水さんは語る。

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「職人さんは厳しいイメージがあったので、最初は緊張していたんです。でも実際に参加してみたらアットホームな雰囲気にほっとしました。師匠の人柄が素敵だったんですよね」

インターンシップで印象に残っているのは、竹の風車を作ったこと。扱いが難しく、まったく歯が立たなかったが、手慣れた様子で形にしていく師匠の姿がかっこいいと思ったという。

「この技術を受け継いで、伝統工芸を多くの人に伝えたいと思ったんです。ひとつのものを貫く生き方にも憧れていたこともある。師匠の優しくて温かい人柄に触れて、ここならやっていけるかもしれない、そう感じました」

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インターンシップを経て、清水さんは東京から熊本に移住。竹細工職人の修業がはじまった。未経験からどのように技術を身に着けていったのだろうか。

「最初は、桑原竹細工店の主力商品である箸づくりからはじめました。なかなかうまく行かなくて、竹を均等に削れず、細くなってしまって。でも半月ほどで、コツを掴むことができました」

時間を重ねる中で、籠作り、お正月の門松など、様々な作業も任せられるように。師匠からは郷土芸能人形「おきんじょ人形」の絵付けが上手と褒めてもらっているという。

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「上達は、師匠の人柄あってこそですね。作業がうまく行ったときは『よかよか』、失敗しても『よかよか』と言ってくれる(笑)まるで熊本のおじいちゃんができたような気持ちです。野菜をいっぱいおすそわけしてくれたり、本当に優しいんです」

温かい師匠のおかげで、ホームシックもそこまで感じなかったという清水さん。そもそも、はじめての土地へ移住して、職人をめざすことに不安は無かったのだろうか?

「意外とありませんでした。インターンシップに参加したとき、日奈久の景色に感動したんです。川が流れていて温泉があって、美しい場所で暮らせることに胸がドキドキしました。市役所の移住担当の方も優しくて、良い人たちがいっぱいいると思い、移住しました」

“まるで、ずっと夏休みのような場所”。日奈久での暮らしを清水さんはそう語る。仕事を終えると、毎日きれいな星空を見上げながら帰路につく。仕事をきっかけに仲の良い友人もできて、休みには熊本県内の色々な所へ出かけるようにもなった。

「熊本・阿蘇にある大観峰という場所が好きで、友達と一緒にドライブに出かけます。少しずつこの場所での暮らしも楽しめていますね」

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日奈久で生きていくなかで、だんだんと自分らしい職人のありかたも見えてきた。大学で学んだグラフィックデザインと職人のものづくりの融合だ。最近では、職人として働きながら、副業としてボトルのラベルデザインの仕事も行っているという。

「職人としては、師匠の技術を継承して、様々な竹細工をつくることができる竹のエキスパートになりたいです。さらに、竹細工の技術を生かして、デザインと組み合わせた作品制作もいつか挑戦してみたいと思っています」

ふとした関心から参加したインターンシップが、清水さんの人生を大きく変えていった。

「もし職人に少しでも関心がある方がいらっしゃったら、ぜひ挑戦してみて欲しいです。実際に体験してみることで見えてくることがいっぱいある。私自身もそうだったので」

産地のために何かをしたい、技術を受け継ぎたいという思いと、自分なりの仕事を作っていくこと。どう生きていくか、清水さんの職人としての人生はまだはじまったばかりだ。

取材・文章/荒田 詩乃 写真/本人・ニッポン手仕事図鑑 提供

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