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四百年の火を絶やさない。

「鍛冶屋創生塾」が担う

土佐打刃物の伝統技術の未来

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私たちの暮らしの根底を支え、日本の歴史とともに歩んできた「刃物」。
一本の鉄に命を吹き込み、実用的な道具へと昇華させてきた技術は時代を超えて、職人たちの手から手へと受け継がれてきた。

その産地のひとつが、高知の山間で独自の文化を築いた「土佐打刃物」である。県土の8割以上を急峻な山々が占める高知県では、古くから木を伐り、枝を払い、山を切り拓く山仕事が生業として根付いてきた。過酷な大自然に挑む人々にとって、刃物はまさに頼れる守り刀。だからこそ鍛冶職人の存在もまた、大きな役割を担ってきたのである。

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高知の文化を400年余り支えてきた刃物職人の技

全行程をその手で。一貫製造と自由鍛造に挑む職人の矜持

「最初から最後まで、自らの手で刃物を仕立てあげる“一貫製造”が、土佐打刃物の魅力であり、作り手としてのやりがいがあります」

そう語るのは、高知県香美市の鍛冶見習いの富永智也さん。

国内にある刃物の産地の多くは鍛冶、研ぎ、柄付けなどの専門の職人が担う分業制であるが、土佐打刃物はすべての工程を一人で手がける。だからこそ、使い手のこだわりをそのまま形にできるのだ。

さらに土佐打刃物は、決まった金型を使わず職人の目と腕だけで鉄を叩き伸ばす“自由鍛造”という技法を貫いている。「使う人の用途や手の大きさなどにあわせて、寸法や刃物の厚み、柄の角度を細かく調整できます。いわば、使い手に合わせたオーダーメイドのモノづくりです」と、富永さん。

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鍬ひとつでも刃の数や太さ、長さなど使い手や用途により様々な型がある

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土佐打刃物の製品の一例。山道具や農具が主である

この自由鍛造と一貫製造の掛け合わせだからこそ、使い手の相棒となる一生物の道具が生まれる。鉄の形を自在に操り、技術とこだわりを注ぎ込んだ刃物。それこそが、土佐打刃物の職人が手にする至高の面白さであり、誇りなのだ。

徒弟制度を超えた「学びの場」。8品目を習得できる鍛冶屋創生塾

刃物職人を目指すためには、親方の下で修業をするのが常だが、職人の定着が難しいというのが課題にあった。現在、土佐打刃物の職人は約70名。その多くを70代〜80代の高齢層が占めている。
こうした担い手不足の危機感を背景に、土佐打刃物組合は従来の徒弟制度ではなく、「講師と研修生」という新しい関係性で技術を学ぶことができる「鍛冶屋創生塾」を2019年に高知県香美市に開塾した。

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自然に囲まれた環境。左側の建物が鍛冶屋創生塾

「土佐打刃物は、鎌・鋸・鍬・鉈・柄鎌・斧・鳶・包丁の8品目が主な製品です。これらの製作技術を包丁・鎌・鉈を中心に、2年の研修期間で学ぶことができます」と、土佐打刃物組合の田辺一志さん。

鎌職人、包丁職人など専門分野に特化した19名の現役職人に教えてもらうことができる。徒弟制度では、親方の製作する単体品目しか学ぶことができないため、どの刃物職人になるのか事前に決めなければならないが、塾ではすべてを学びながら2年後に、どの刃物の専門職人になるのか未来像を見据えながら習得できるのが最大の魅力だ。

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研修期間は2年。同期は3名で、講師も教えやすい環境

実は、先述の富永さんも鍛冶屋創生塾のOBである。

「同じ刃物でも、製品によって作り方がまったく異なります。その技術を短期間で習得することは大変ですが、それ以上のやりがいが見出せます」

2年間で1000本以上の刃物を製作するという。ベルトハンマーやグラインダーなどの道具は1人1台用意され、設備面の環境は申し分ない。
しかし、正解(型)のない自由鍛造と一貫製造の土佐打刃物は覚えることも多く、最初は思い通りにいかない葛藤の連続だ。それでも「それ以上のやりがいがある」と富永さんが語るように、自らの腕で鉄を自由に操る面白さが彼らを突き動かす。こうした挑戦を続けられる背景には、鍛冶屋創生塾による技術習得だけに留まらない手厚い「生活への伴走」があった。

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講師がマンツーマンで教えることも多い

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土佐打刃物組合の運営のため資料も多く揃う

2年間の手厚いサポート。高知に根を張り、プロの鍛冶屋へ

入塾生のほとんどは異業種からの転職組。彼らの生活を支えるのが、香美市からの補助金制度だ。2年間の研修中、毎月15万円が支給され、一部が研修費に充てられる。この確実な支援があるからこそ安心して技術習得に没頭できるのだ。
また、香美市は高知市のベッドタウンとして注目されている町。大学があるため単身者用のアパートやマンションも多く、スーパーなどの量販店も充実しているため移住後の生活にも困らない。

「補助金の受給には、卒業後を含めて香美市内にて5年間居住が必要という条件があります。しかし、これまでの卒業生9名は全員、市内で刃物職人として活躍しています。塾の強みは、研修中にたくさんの鍛造所の親方たちと深く接点を持てること。どの親方の下に着きたいか、じっくり見極められるのも大きなメリットです」と田辺さん。

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同期で切磋琢磨し、技術の習得を目指せるのも強み

さらに、塾生やOBたちの絆の強さも、挑戦のハードルを下げてくれる。

「親方との縦のつながりだけでなく、塾生同士の横のつながりが本当に強いんです。20代〜30代と年齢も近いこともあり、誰かが困っていたら、みんなが自然と集まってくる。職人として互いに切磋琢磨する良きライバルであり、支えあう仲間がすでにこの地にいるのは、すごく心強かったですね」と富永さん。

その手厚いサポートの結果、すでに3名のOBが独立を果たした。さらに独立後も、研修中の頑張りを見てきた地域の問屋や小売店が、販路を支えてくれることも多く、地域全体がビジネスの基盤まで応援してくれるのだ。

現在、鍛冶屋創生塾では令和9年(2027年)5月に入塾できる5期生を募集している。

新しい挑戦に不安はつきものだが、自分で動く「やる気」さえあれば、これほど心強い場所はほかにない。

取材・文章/稲垣 あや 写真/高知県土佐刃物連合協同組合

<<土佐打刃物鍛冶屋創生塾 第5期生募集中!>>
新たに鍛冶職人を目指したい方に道を開き、
土佐打刃物にしかできない自由鍛造の技術を習得させ、
伝統的工芸品「土佐打刃物」を次世代へ残すことを目的として、研修生を募集します!

【募集概要】
●募集期間:〜2026年12月28日(月)
●募集人数:3名
●募集条件:経験・性別不問。40歳までの心身ともに健康で日本国籍を有する者

【研修について】
●研修期間:
 令和9年5月〜令和11年4月 ※2年間(年間240日を予定)
●研修場所:
 鍛冶屋創生塾 (香美市土佐山田町上改田113-1)
●研修内容:
 自習と座学。座学は技術基礎の他に、経営も学べるカリキュラムがあります。
 20日ほどの座学研修のあと、実習中心の授業となります。
●研修費用:
 164万円。ただし、高知県伝統的工芸品産業等後継者育成対策事業費補助金あり。
 要件を満たした場合は2年間月額15万円が支給されます。

詳細はこちら▶︎http://tosahamono.com/kajiyasouseijuku-Bosyuu.pdf

【応募・問い合わせはこちらから】
詳細・応募のお問い合わせは、事務局までメール、もしくはお電話でご連絡ください。

連絡先:〒782-0056高知県香美市土佐山田町上改田113-1
高知県土佐刃物連合協同組合 鍛冶屋創生塾 事務局 田辺 一志
E-mail:tosahamono@sage.ocn.ne.jp
電話:0887-53-9530 FAX:0887-53-9531