NEW

【若手職人の、いまの話。】

人に喜ばれるものづくりで

久留米絣をもっと多くの方へ

メイン画像

「久留米絣の職人さんはそれぞれやり方も考え方も違うんですけど、産地一丸となって一緒にものづくりをしている感じがあって。そこがいいなと思ったんです」

そう話すのは、創業大正8年、福岡県筑後市で久留米絣の伝統を継ぐ池田絣工房で働く吉田有希子さん。

2023年に参加した「久留米絣後継者インターンシップ」をきっかけに就職。現在は主に経糸、緯糸の加工を担う職人として技術の習得に励んでいる。

大学では日本美術史を専攻。
卒業論文で地元の伝統産業である久留米絣をテーマに執筆したことで絣の魅力に惹かれ、卒業後に京都のテキスタイルの技術専門校に進学。より実践的に絣や織物を学んだ。

「作家として独立する道もありますが、一人で制作するよりも、工房内で働く職人のひとりとして、人と関わりながらものづくりをする方が、自分には合っていると思っていました。ちょうど進路を悩んでいたときに久留米絣の職人募集のインターンシップを見つけて、すぐに応募しました」

現地に行ったからこそ、理想の職場が見つかった

サブ画像2
サブ画像3

2泊3日のインターンシップでは、池田絣工房の特徴のひとつである天然藍染での染織や加工の手伝いなど、より実務に近い作業を体験した。

また、「久留米絣を多くの人に届けたい」と若手職人たちを中心に一丸となって活動する産地だからこそ、他の工房の見学や職人の話を聞くことは、より久留米絣の産地全体の理解を深めた。

「久留米絣に対する職人さんの想いや、一つひとつの工程の大切さや難しさなど、事前勉強だけでは知り得ない、現場に足を運んだからこそ知れたことが多い貴重な機会でした。工房での就業体験で感じたのは、染織・加工から手織りまで、いろんな職人さんたちと一緒にものづくりをしている一体感。“ここで職人として働きたい”と思いました」

インターンシップ終了後、内定の連絡を受けた吉田さんは迷うことなく承諾。

こうして、久留米絣の職人としての新たな人生が始まった。

周囲に支えられ、一歩づつ、着実に成長する

サブ画像4

久留米絣は柄模様に合わせて糸数を割り出す整経や、糸の藍染、絣模様を出すための括りなど約30もの工程を経て完成する。

3年目となった吉田さんが担う経糸や緯糸づくりは、わずかなミスで仕上がりに大きく影響する繊細な仕事だ。

たった数年で、責任重大な役割をひとりで任されるほどに目覚ましい成長を遂げる吉田さんだが、「入社当初は全然できなかった」と話す。

「思うように糸を扱えず、絡まったり切れてしまったり。失敗して、できない自分に落ち込むこともたくさんありました。でも、困った時は『大丈夫だよ』と周りの方が助けてくれて。工房のみなさんが本当にあたたかいんです」

「職場環境の良さが支えてくれた」と話す吉田さんだが、「できるようになりたい」という強い意志を持ち続けたことが、何よりも彼女の成長を後押ししたはずだ。謙虚で、気立てのよい“人の良さ”を持っている吉田さんは、工房の職人さんたちから愛されていることが容易に想像できる。

「織りやすい糸を作って織り子さんたちに喜んでもらえるのがやりがいです。織り子さんに織っていただいて製品になり、お客様の手にわたる瞬間を見届けられるのも嬉しいですね」

大好きな久留米絣の魅力を多くの人に知ってほしい

サブ画像5

催事出店が多い池田絣工房では、吉田さんが店頭に立つことも少なくない。

「お客様の心をつかむのが上手い」と池田絣工房4代目も話すほど、接客の場でもその良さが光る。

「久留米絣は手織りや機械織など、いろんな作り方があるのも特徴ですし、藍染の糸も、仕込んだ時期によって状態が変わるので、ひとつとして同じものができないんです。生地も使っていくうちに柔らかくなって、自分の体に馴染んでいくのも魅力です。久留米絣の良さをもっともっと多くの人に知ってほしいので、実際に手に取りながらお話しできる機会は大事にしていきたいと思っています」

口数が多い方ではない吉田さんだが、言葉に少し熱を帯びながら話してくれた。

実直なものづくりで、産地に貢献する

サブ画像6

躍進を続ける吉田さんに「今後どうなりたいか?」を尋ねると、少し考えながらこう答えてくれた。

「まずは基礎的な力をしっかり身につけて、ブレない技術を持つ職人になりたいです。多岐にわたる工程のうちの一部を担っているのだからこそ、自分の後の工程の方にいつも安定して良い状態でバトンを渡せるようになりたいです。それで、みなさんに喜んでもらえたらとても嬉しいです」

人を想い、目の前の仕事に情熱を持って、ひたむきに向き合う吉田さん。
久留米絣の産地に欠かせない職人になるまでに、そう時間はかからないだろう。

取材・文章/中野昭子 編集/藤本那奈子 写真/本人提供・ニッポン手仕事図鑑

インターンシップの最新情報がいち早く手元に届く!
ニッポン手仕事図鑑公式LINEアカウント『伝統工芸インターン』
▼友だち追加はこちらから
https://line.me/R/ti/p/%40899stotz