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【若手職人の、いまの話。】

熊本で残り数件の鍛冶屋で

ひたむきに刃物に向き合う。

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熊本県美里町で大正十年に創業し、山や畑、日常生活で使う包丁、鉈、鎌などの刃物を製造してきた隈部刃物製作所。熊本県でもトップレベルの技術をもち、2006年には熊本県指定の伝統的工芸品に指定される。現在も地域の人の生活を支える刃物を作り続け、地元ではなくてはならない存在だ。

火を入れ、鉄を叩き、刃を仕上げる。長年にわたり受け継がれてきた製法で刃物づくりを続ける隈部刃物製作所に、2023年に弟子入りしたのが野口勇哉さんだ。もともと都内の美術大学に通っていた野口さんは、2022年に実施された「手打ち刃物後継者インターンシップ」に参加。3代目の隈部寛さんと4代目の智大さんから直接指導を受けた後、移住と就業を決意した。

なぜ野口さんは伝統工芸の分野に飛び込んだのか。また、参加当初に不安を感じることは無かったのか。現場で学んでいくなかで、どういった点に充実感を抱いているのか。

刃物職人として弟子入りし2年ほど経った今、率直な思いを聞いた。

一流の職人技に感銘を受け、弟子入りを決意

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学生時代、東京の多摩美術大学で鍛金を学んでいた野口さんは、金槌や鏨(たがね)の制作を通じて職人に興味を持ったと話す。

「授業で学んだ道具作りが楽しくて。その技術を生かした仕事に就きたいと調べていたら、後継者インターンシップのことを知り、まずは行ってみよう、くらいの気持ちで参加を決めました」

インターンシップでは、地金と鋼を鍛接する最初の工程から、研ぎと仕上げまでを体験。実際に1本の包丁を自分たちの手で作り上げた。もちろん、全ての工程をひとりで完結できるはずはなく、隈部さんや智大さんが実務さながらに指導をしてくれたという。

「師匠は刃物づくりに対するこだわりは強く、厳しい一面もありましたが、ずっと笑顔で指導してくれました。東京から移住する僕に対して、住む場所や生活のことなど、親身になって考えてくれたことがありがたかったです」

何より、一流職人の技術力の高さを目の当たりにしたことが、隈部刃物製作所への弟子入りを決定づけた。

「品質、スピード、直感の精度、全てにおいて学校で学んできたこと以上の発見の連続でした。自分もこんな職人になりたいと、気持ちが高まったことを覚えています」

その後、野口さんは縁もゆかりもなかった熊本県美里町へ移住し、刃物職人として新たな道を踏み出した。

入社して1年半。刃物づくりの面白さを実感。

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野口さんの夢は、刃物関連の自分のお店を持つこと。その目標に向けて、刃物づくりの基礎を学びながら、基盤を固めている。

「『技術継承者になれるのか?」というプレッシャーは入社当時から変わらず、今でもあります」と話すが、2年目の現在は刃物の出来を左右する、大事な仕上げの工程を任されている。

「多岐にわたる製造工程において、特に達成感を感じるのが仕上げです。まだまだ一流には遠いレベルですが、刃物の研ぎや修理を手伝わせてもらうなかで、『お金を取ってもいいレベルになっている』と、師匠に言ってもらえたときは嬉しかったですね」

仕上げがある程度できるようになったことで、お客さんに砥石を使った手入れの仕方も教えられるようになったという。日々、修行の励みになるのは地域の人からの声だ。

「美里町は畑や田んぼが多くて、農家さんが農具を修理に出しに来ることが多々あります。その際に僕にも野菜の差し入れをしてくれるんです。地域のみなさんからの応援が、『頑張ろう』 という励みにつながっています」

現場での実務経験が職人人生の財産になる

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野口さんは大学時代に金属加工を学んでいたため、全くの未経験者ではなかったが、弟子入りしてから初めて学ぶことや気付きは多かったという。

「実際の職人の現場では、同じ日々はありません。天候によって炉の状態も変わり、機械や道具の調子が悪くなれば出来栄えも変わる。勉強して得られる知識よりも、実践して得られる知恵や技術が圧倒的に多いです。もちろん、学生時代の学びを活かせることもありますが、職人として生きていく上で財産になるものは、現場でしか得られないと感じています」

最後に、職人を目指したいという方に向けて、メッセージをもらった。

「『後継者』と言われると、何百年と継承されてきた技術をさらに継承していかなければならない、とプレッシャーに感じることもあると思います。もちろんそれも大事ですが、もう少し肩の荷を下ろして、楽に捉えてもいいのかな、と最近は思います。今後も長く受け継がれていってほしい技術だからこそ、時代に合った形を考えながら自分なりの継承の仕方を考えるのも、僕たち若い世代の役割なのではないでしょうか」

取材・文章/伊東 克啓 編集/藤本 那奈子 写真/本人・ニッポン手仕事図鑑 提供

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